気づけば今日も会議で終わった。カレンダーを開くと、色とりどりの予定が隙間なく並んでいる。実務に手をつけられるのは、結局夜か週末。
会議が多いこと自体は、必ずしも悪ではない。問題は「なんとなく出ている会議」が積み重なっていることだ。招待が来たからとりあえず承諾する。「一応聞いておこう」と顔を出す。気づかないうちに、そんな会議がカレンダーを侵食している。
報告会議を減らしてみた話
私自身、以前は報告系の会議に複数出席していた。
報告者は同じだが、報告対象が違う。経営層向け、部長向け、現場向け。当然、粒度も違う。経営層向けはサマリー中心、現場向けは詳細な進捗。私の立場では、すべてを把握する必要はなかったはずだ。
それでも「一応出ておこう」と、全部に顔を出していた。出ないと何か見落とすんじゃないか。後で「あの話、聞いてないの?」と言われたらどうしよう。そんな漠然とした不安——今思えば、取り残されることへの恐れだった。
転機は、別件が重なって物理的に出られなくなったときだった。「後でキャッチアップしなきゃ」と焦っていたが、議事録を読んだら5分で済んだ。拍子抜けした。今ならAI議事録ツールで要点だけ確認することもできる。リアルタイムで1時間聞く必要は、そもそもなかったのだ。
それ以来、報告系の会議はトップ層向けのサマリー会議だけに絞った。他の会議からは静かにフェードアウトした。誰にも何も言われなかった。「あの話、聞いてないの?」と言われることも、一度もなかった。
この経験から気づいた「問いの立て方」
振り返ると、私は長い間、間違った問いを立てていた。
「この会議、出た方がいいかな?」
こう考えていた。これだと、たいていの会議は「まあ、出ておくか」になる。出ないリスクばかりが頭をよぎり、出ないという選択肢が取れない。
あの経験で学んだのは、問いを逆にすることだった。
「この会議、出なかったら何が困る?」
実際に出られなくなって、何も困らなかった。その事実が、問いの立て方を変えてくれた。今は、会議の招待が来たら次の3つを自分に聞いている。
1. 自分は発言を求められているか?
意思決定に関わるのか、意見を求められているのか。答えがNoなら、自分は「当事者」ではなく「オブザーバー」だ。
2. この会議に出なかったら、具体的に何が困るか?
「なんとなく不安」ではなく、具体的に困ることを挙げてみる。挙げられないなら、それは出なくていい会議の候補だ。
3. 同じ情報を、後から得る手段はあるか?
議事録、録画、AI議事録ツール、誰かに聞く。今は会議の内容を後から把握する手段が豊富にある。手段があるなら、リアルタイムで1時間拘束される必要はない。
発言を求められていない。困ることが思い浮かばない。後から情報を得る手段がある。3つ揃ったら、その会議は出なくていい可能性が高い。
月曜から試せること
今週のカレンダーを開いて、1つだけ会議を選んでほしい。発言する予定がなく、聞いているだけになりそうな会議だ。
そして、次回を1回だけスキップしてみる。
代わりに議事録を読むか、出席した人に「何か重要なことあった?」と聞けばいい。それで困らなかったら、その会議は「出なくていい会議」だったということだ。
最初の1つを減らすのが、一番ハードルが高い。でも一度やってみると、「意外と大丈夫だった」とわかる。その経験が、次の会議を見直す後押しになる。
「なんとなく出ている会議」は意外と多い。
完璧に見極めなくていい。まずは1つ減らしてみよう。
もう少し深く知りたい人へ
会議の増加は、多くの組織に共通する課題だ。組織心理学者のスティーブン・ロゲルバーグによれば、アメリカでは1日あたり約5500万件の会議が行われている。1960年代には週10時間程度だった会議時間が、現在は週23時間にまで増加しているという推計もある。
なぜ「出なくていい会議」に出てしまうのか。心理学では「FOMO (Fear of Missing Out) 」と呼ばれる現象がある。情報を見逃すかもしれない、取り残されるかもしれない、という恐れだ。本編で触れた「出ないと何か見落とすんじゃないか」という不安は、まさにこれにあたる。
厄介なのは、FOMOは実際のリスクとは無関係に働くことだ。「出なくて困った経験」がなくても、「困るかもしれない」という想像だけで人は会議に出続ける。だからこそ、一度「出なくても大丈夫だった」という経験をすることが重要になる。恐れが思い込みだったと気づけば、次の判断は格段に楽になる。
ロゲルバーグらの研究では、会議の効果性に影響する要素として、明確な目的、適切な参加者の選定、アジェンダの事前共有などが挙げられている。裏を返せば、目的が曖昧で「とりあえず関係者を呼ぶ」会議ほど、オブザーバー参加者が膨れ上がりやすい。会議を減らす努力は、個人だけでなく、会議を設計する側にも求められる。
参考文献
- Rogelberg, S. G. (2019). The Surprising Science of Meetings. Oxford University Press.
- Leach, D. J., Rogelberg, S. G., Warr, P. B., & Burnfield, J. L. (2009). Perceived meeting effectiveness: The role of design characteristics. Journal of Business and Psychology, 24(1), 65-76.
- パトリック・レンシオーニ『会議が絶対うまくいく法』